2016年7月6日水曜日

アッバス・キアロスタミ逝去

イランの映画監督アッバス・キアロスタミが2016年7月4日にがんで亡くなったとのニュースが流れてきました。

アッバス・キアロスタミ監督は、「ジグザグ道三部作」と呼ばれる「友だちのうちはどこ?」(1987年)、「そして人生はつづく」(1992年)、「オリーブの林をぬけて」(1994年)で有名な、イランを代表する監督です。

私には2003年の、第5回NHKアジア・フィルム・フェスティバルに「5 five ~小津安二郎に捧げる~」という作品で参加したキアロスタミ監督の上映後の挨拶を見た思い出があります。

「5 five ~小津安二郎に捧げる~」は、小津安二郎に捧げる・・・というサブタイトルとは裏腹に、ちょっと前衛的で、固定カメラで海岸を行き交う人や犬を撮り続けたものや、波打ち際で転がる木片や、夜中の湖面に揺らめく満月の映像など(fiveというくらいですからあと二つくらいあったかも知れませんが・・・)、ぱっと見た感じでは、誰もが「どこが小津?」と思うような作品でした。

この映画は、後にBSか何かで放送されたくらいで、見た人もあまり多くないと思います。

放映後の質疑応答の際に、「どこが小津なのか?」と迫る質問があり、監督は「実は撮っている時は、小津へのオマージュのつまりはなかった・・・」と告白したのが印象的でした。でも監督は小津安二郎から多くの影響を受けたことや、今回の作品で撮った海から、東京物語のラストシーンで周吉が眺めた海を想起したことから、後で“小津安二郎に捧げる”とした。・・・という経緯を語っていました。

ちょっと眠気を誘うような退屈な映画の部類だと思いますが、キアロスタミ監督は、「この映画でちょっと眠ってしまったとしても、目を覚ました時に何も見逃していないことを知るでしょう。」と言ったことにすごく感銘を受けました。

私のキアロスタミ監督の思い出でした。ご冥福をお祈りします。